得たこと

キャズム」を読み終わった。

この何年間の間、自分が色々感じてきた違和感を、自分なりに説明できるようになった(と思う)のが大きい。これが得たことの一つ目。

二つ目。加えて、自分の意識の中に足りないところも見つかった。

今まで僕は、「ホールプロダクト」というものを意識したことはなかった。特定のマーケットセグメントの顧客に対し、その顧客が望むものすべてを完成品として提供するということを考えたことがなかった。

僕は、自分の作り出すものを展開する市場として「メインストリーム」を想定していない。想定しているのはいわゆる「初期市場」という市場だろう。キャズムでも述べられているが、プロダクトの初期市場では、ビジョン先行派の「ビジョナリー」という層がターゲットになる。これらの人たちにとっては、「ホールプロダクト」よりも「コアプロダクト」が優先。そして彼らが考えることは、自分たちが見つけた革新的なプロダクトを使って、自分たちのビジネス上の夢に近づけるかどうかということだけだ。

しかし、いくら「ビジョナリー」をターゲットとしているといっても、最近のように技術が溢れている世の中では、「ターゲットの特定」と「ホールプロダクト」を無視はできないように思う。常に勝てる技術を求めているビジョナリーは、革新的な面と保守的な面の心のバランスをうまくとっている。ビジョナリーを納得させるには、その保守的な面を切り崩すための「必然性」がいる。彼の新規技術採用基準の中に、キャズムで述べられているテクノロジーライフサイクルのミニチュア版が潜んでいるとも言えるかもしれない。ちなみに、自分の場合で言うと、新しい技術を認める/受け入れる敷居は高いほうだと思う。しかし、それが本当にすばらしいものだと信じることができれば、それらについていくらでも語れるくらい使いたおす。最近、次々と新しい製品や技術が日常の中に溢れてきている。ある程度のバリアーをはっていないとすべてが消化不良になってしまうのではないかという恐れが自分の中に働いているのだと思う。

こういう点を踏まえてSobalipseを考えてみる。

僕は、Sobalipseを、同僚とのプログラミング相談やプログラミング上のトラブル対応に使っている。Sobalipseを使うことで、これまでだったら頻繁に席を行き来しないといけないことが手軽にできるようになった。便利だ。同僚にJavaのテクニックを教えて喜んでもらえたときは嬉しい。教える楽しみというものを思い出した。

しかし、必然性を感じるか?と言われると、確信をもってYesと言えない。そもそも何に対する必然性だろう?また、Sobalipseでトラブル対応していると、Sobalipse上でのやり取りだけでは足りなくて、直接相手の席に行って、現象を確認させてもらうことも多い。(やはり現象を確認させてもらうと、自分の経験がフル動員されて、解決が早くなることも多い。)

そういうことを考えた場合、このプロダクトは何なのか?このプロダクトによって何が解決されるのか?このプロダクトは、どの範囲のことをカバーしていて、どの範囲のことはカバーしていないのか?ということが曖昧に感じてくる。「○○に使える」と言うのは簡単だが、「○○にしか使えない」と言うのは非常に難しい。マーケティングによほど自信がないと言えない言葉だと思う。ターゲットをしぼって、そのターゲットが望むホールプロダクトを、決して捻じ曲げずに真摯に見つめる。そして一直線にそこを目指す。一番重要だけど一番難しいと思う。

精進したいと思った。